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2011
09
22

2011/9/22- Count down- #04

count down- 2011/9/22- [ 21,915 -01 ]



前夜。

Last day ~ first day



《Je est un autre.》(=I is someone else.)



Richard Burmer - Across the View












Jean Nicolas Arthur Rimbaud
Une Saison en Enfer(1873年)


ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー 地獄の季節Ⅵ(小林秀雄 訳)



    別れ

 もう秋か。 ―― それにしても、何故、永遠の太陽を惜しむのか、俺達はきよらかな光の発見に心ざす身ではないのか、 ―― 季節の上に死滅する人々からは遠く離れて。
 秋だ。俺達の舟は、動かぬ霧の中を、纜を解いて、悲惨の港を目指し、焔と泥のしみついた空を負ふ巨きな街を目指して、軸先をまはす。あゝ、腐つた襤褸、雨にうたれたパン、泥酔よ、俺を磔刑にした幾千の愛慾よ。さてこそ、遂には審かれねばならぬ幾百万の魂と死屍とを啖ふこの女王蝙蝠の死ぬ時はないだろう。皮膚は泥と鼠疫に蝕まれ、蛆虫は一面に頭髪や腋の下を這ひ、大きい奴は心臓に心臓に這ひ込み、年も情も弁へぬ、見知らぬ人の直中に、横はる俺の姿が又見える、……俺はさうして死んでゐたのかもしれない、……あゝ、むごたらしい事を考へる。俺は悲惨を憎悪する。
 冬が慰安の季節なら、俺には冬がこはいのだ。

 ―― 時として、俺は歓喜する白色の民族等に蔽はれた、涯もない海浜を空に見る。黄金の巨船は、頭の上で、朝風に色とりどりの旗をひるがへす。俺はありとあらゆる祭を、勝利を劇を創つた。新しい花を、新しい星を、新しい肉を、新しい言葉を発明しようとも努めた。この世を絶した力も得たと信じた。扨て今、俺の数々の想像と追憶とを葬らねばならない。芸術家の、話し手の、美しい栄光が消えて無くなるのだ。
 この俺、嘗ては自ら全道徳を免除された道士とも天使とも思つた俺が、今、務めを捜さそうと、この粗々しい現実を抱きしめようと土に還る。百姓だ。
 俺は誑かされてゐるのだろうか。俺にとつて慈愛とは死の姉妹であろうか。
 最後に、俺は自ら虚偽を食ひものにしてゐた事を謝罪しよう。さて行くのだ。

 だが、友の手などあろう筈はない。救ひを何処に求めよう。

         ★

 如何にも、新しい時といふものは、何はともあれ、厳しいものだ。
 俺も今は勝利はわがものと言ひ切れる。歯噛みも火の叫びも臭い溜息も鎮まり、不潔な追憶はみんな消え去る。俺の最後の未練は逃げる ―― 言はば乞食、盗賊、死の友、あらゆる落伍者の群れへの嫉妬だが、 ―― 復讐成つた以上は亡者共だ。
 断じて近代人でなければならぬ。
 頌歌はない、たゞ手に入れた地歩を守る事だ。辛い夜だ。乾いた血は、俺の面上に煙る、このいやらしい小さな木の外、俺の背後には何物もない。……霊の戦も人間の戦の様にむごたらしい、だが正義の夢はたゞ『神』の喜びだ。

 まだまだ前夜だ。流れ入る生気とまことの温情とは、すべて受けよう。暁が来たら俺達は、燃え上がる忍辱の鎧を着て、光り輝く街々に這入ろう。

 友の手が何だと俺は語つたか、有難い事には、俺は昔の偽りの愛情を嗤ふ事が出来るのだ、この番になつた嘘吐き共に、思ひ切り恥を掻かせてやる事も出来るのだ、 ―― 俺は下の方に女共の地獄を見た、 ―― 扨て、俺には魂の裡にも肉体の裡にも、真実を所有する事が許されよう。


引用出典

『考えるヒント4 ランボオ・中原中也』 小林秀雄 文春文庫、文藝春秋












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922


ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー 地獄の季節Ⅵ

別訳
翻訳・門司邦雄




    別れ


 すでに秋だ!  ― だが、なぜ永遠の太陽を惜しむのか、おれたちが神聖な光の発見にこの身を捧げているのなら、 ― 季節の上に死にゆく人々からは遠く離れ。

 秋だ。よどんだ霧のなかに立ちつくすおれたちの小舟は、あの悲惨の港、空にある火と泥で汚れた巨大な都市へと舳先をまわす。ああ! 腐ったボロ着、雨に打たれたパン、泥酔、おれを十字架にかけた数知れぬ愛欲! これでは、「あいつ」は、死に「そして裁かれる」数知れぬ魂と肉体を喰らう女王、あの女食屍鬼をやめることはないだろう! 皮膚は泥とペストに蝕まれ、髪の毛にも脇の下にもうじ虫が這い、心臓にはもっと肥えたうじ虫が巣食い、年齢も感情もない見知らぬ人々の中に倒れているおれの姿が目に浮かぶ… おれはあそこで危うく死ぬところだった… 恐ろしい記憶だ! おれは悲惨を憎悪する。

 おまけに、おれは冬が怖い! 冬が安らぎの季節だからだ。
  ― 時折、おれは歓びあふれる白色民族に占領された果てしない浜辺を空に見る。おれの上では、朝のそよ風の中で、黄金の巨船が色とりどりの旗をはためかす。おれはあらゆる祭りを、あらゆる勝利を、あらゆるドラマを創った。新しい花々、新しい星々、新しい愛欲、新しい言葉を発明しようと努めた。超自然の力を手に入れたと信じた。だが! おれは己の空想と思い出を埋葬しなければならない! 芸術家と作家の輝かしい栄光が奪われたのだ!
 あらゆる道徳を免除され、魔術師とも天使とも自ら名のっていたこのおれが! 探し求めるべき務めと抱きしめるべきごつごつした現実とともに、土に戻される! 百姓だ!
 おれは騙されているのか? おれにとって、愛)とは死のようなものなのか?
 最後に、おれは嘘でこの身を養ってきたことを謝ろう。さて、行こう。
 だが、友の手は無い! どこに救いを求めるのだ?

 そうとも、新しい時は、少なくともとても厳しいのだ。
 おれは勝利を手にしたと言えるのだから、歯ぎしりも、火のあえぎも、臭いため息も納まった。汚れた思い出はことごとく消え去る。おれの最後の未練が逃げてゆく、 ― 乞食、ごろつき、死の友、ありとあらゆる落伍者への嫉妬だ。 ― 地獄堕ちらめ、仕返しができたら!
 徹底的に現代的でなければならない。
 賛美歌はない。勝ち取った歩みを続けるのだ。辛い夜だ! 乾いた血がおれの顔で湯気を立てている、おれの背後にはあの恐ろしい善悪の潅木があるだけだ… 精神の戦いも人間の闘いと同じように残酷だ。だが、正義の光景は神ただひとりのお楽しみだ。
 しかし、今はまだ前夜だ。流れくる精気と真実の優しさは受け取ろう。夜が明けたら、燃えるような忍耐で武装して、おれたちは輝く大都会に入るのだ。
 友の手についておれは何を語ったか! とても有利なことに、おれは昔の偽りの恋人どもをあざ笑い、あの嘘つきの夫婦どもを辱めることができるのだ、 ― おれはあそこに女どもの地獄を見た。 ― そして、おれには「ひとつの魂とひとつの肉体の中に真実を所有すること」が許されるだろう。

翻訳・門司邦雄




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Comment

  1. ただいま「非公開コメント」も受付中です。
  2. こんばんは

    2011/09/22(Thu) 01:24iri [ URL|Mail ]

    感動的な美しい動画と
    美しい詞ですね
    >「ひとつの魂とひとつの肉体の中に真実を所有すること」が許されるだろう<
    を目指して生きたいなぁ~と思います

    どうぞ良い1日をお過ごしくださいm(__)m^^

  3. 2011/09/22(Thu) 15:51ew1 [ URL|Mail ]

    iriさん、こんにちは。

    気持ちのいい日を過ごしたいのと、
    少し喝を入れたいのとの交錯した気持ちのブログでした(笑)

    >「ひとつの魂とひとつの肉体の中に真実を所有すること」

    こういう事には、憧れます、です。

    今日は、爽やかな気持ちのいい日です。

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